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牛窓シーサイドホールの閉館 [クラシック雑感]

 牛窓の豪商だった東服部家の米蔵を改造して2011年にオープンした牛窓シーサイドホールが、11月1日をもって閉館したというニュースに接しました。

 土足ではなく靴を脱いで上がるというスタイルや、見事な柱と梁の建物に床にも木材をふんだんに使ったホールは、非常に居心地がよく(満席の際は補助席・・・ではなく、座布団が出て席を増設する、というのも印象的でした)、音の響きについても特にヴァイオリンが素晴らしい伸びのある音を響かせていて、本当にいいホールが出来たなあ、と思っていた矢先でした。

 地元出身の2人のピアニストを中心に、岡山の様々なプロの演奏家が登場したマンスリーコンサートなどの意欲的な企画が光っていたし、ここで演奏した舘野泉さんが「牛窓で音楽祭を」との提言などもあって、まさか閉館に追い込まれるまで経営的に厳しい状態だったとは思いませんでした。

 今更悔やんでも仕方ないんですが、私が足を運んだのはたった2度ということで、偉そうなことは言えませんが・・・

 こういう民間のホールは、地方ではほとんど成功例がありません。それを思えば、3年余りでの閉館は早すぎるとはいえ覚悟すべき結果だったかもしれません。しかし、もう少し前の段階で音楽マネジメントの専門家に入ってもらって、文化庁の予算を引っ張って来るとか、地元の瀬戸内市が支援したりできなかったものなのか?と思ったりもします。地元の瀬戸内市も、この全国的に見ても本当に街の歴史や景観に見事にマッチし、音響的にも優れる貴重なホールという『宝石』に気づかなかったんでしょうか?「セットちゃん」なんていうゆるキャラにお金と人的リソースを投入している場合ではないですよ。ホントに。

 隣県の兵庫・島根・広島などに比べると(わが地元岡山市を含めて)、県庁を筆頭に文化振興に対する考え方が10年以上(兵庫に比べると20年以上は)遅れていて、本当に支援が薄い。それでいて、国体や国民文化祭、ゆるキャラやB級グルメ、その上都市型マラソンまで開催する、よそでもやっている似たようなイベントにばかりお金と労力を掛けるのは、もういいかげん辟易します。

 更新されなくなったホールのホームページには、まだホール紹介の文章が残っています。

『クラッシックやジャズなど幅広い音楽を通して歴史とロマンにあふれた牛窓を世界に発信したいというのがホールの夢です。』

 こういったホールが維持できないという脆弱な文化的な土壌であるというのが本当に残念です。
 

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伊閣蝶

これは何とも残念なことです。
「nice」をおつけすることもどうなのかというほど残念な気持ですが、地方のホールのあり方に関して問題提起をなさっておられるヒロノミンVさんのご指摘には強く賛同します。
私の実家にも、地元産の唐松をふんだんに使ったホールがありますが、やはり経営は苦しいようでした。
私もこのホールで、故三木稔先生の音楽祭を企画したことがありましたが、町長や町の有力者に働きかけて何とか実現できたものの、三木先生や演奏者やスタッフへのギャランティは、申し訳ないほど些少でした。
地域でのこうした文化活動を根付かせるためにも、きちんとした公的な補助が必要ではないかと痛感しています。
意味のない衆院選などに使う700億円ものお金があるのならば、こうした方面にもう少しスポットを当ててもらってもいいのではないでしょうか。
by 伊閣蝶 (2014-11-30 12:04) 

ヒロノミンV

>伊閣蝶さん
 コメントありがとうございます。記事を書いているときは熱くなってしまって、今から読み替えるとかなり恥ずかしいのですが・・・。ご賛同くださり心強いです。
 地方で田んぼの真ん中に異様なほどのホールを税金を投入して建設し、あとは放置状態・・・なホールに比べると、歴史的建築物を、見事にリノベーションしてホールに改装する。歴史あっての文化、そして今行われている芸術文化が歴史になる、素晴らしいホールでした。
 経営的な見通しが甘かったのは検証されるべきですが、公共セクターが何らかの形で支援をしていれば、100年後の地域の人々に歴史と文化を引き継いで行けるものが出来るかも知れなかった・本当に惜しいことです。
 岡山でも「くまもん」に続けとゆるキャラやB級グルメでの町おこしにリソースを投入していますが、こんなものが町おこしになるのか?100年後の地域の人々に胸を張って受け継いでいく文化になるのか?疑問は深まるばかりです。
by ヒロノミンV (2014-12-01 18:42) 

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